かくも長き歳月に


小走りに行く犬の

細いリードに曳かれながら

あの人は痩せた肩越しに

軽く会釈をした。

かくも長き歳月

生きながらえたことを

恥じるかのように

弱々しい微笑が

あの人とわたしの間の

舗道を埋める。

わたしの持たないものを

あの人ははじめから

手に入れていた。

なのに、奢らず、誇らず、

質素なふだん着姿で

あの人はいつも静かに

笑っていた。

わたしの上にも

あの人と同じだけの

歳月が刻まれたはずが

あの人の残した含羞は

わたしの胸にじわっと

悲しみに似たシミを

にじませた。

かくも長き歳月

生きながらえたことの

そのむなしさに

人生の流れに馴染まぬ

脂のような自我を抱え

流れのなかを浮遊しつつ

わたしは

珍しくも

他者の幸せを

祈ってもみる。

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写真はこの詩の内容と関係ありません。






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ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

sado joさん

ごぶさたしました。

人は神に祈る。こうしてほしいと?

願いは聞き入れられるでしょうか。祈りには願いは必要ないのかもしれないですね。

こんにちわ^^

生きるとは、哀しみを背負い、罪を背負い、何よりも死を背負う事。
初めからチェックメイト出来ないチェスをやってるのと同じ…最期はゲーム盤ごと消えて無くなる。
なので、人は神に祈るのでは無いですか?
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やっとみつけた本当のわたし。自分探しはもうおしまい。ずっとまえからここにいる。わたしの名はメランコリー。

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