四旬節の憂鬱 もしくはサタンの誘惑


なにか嫌なものを引き連れてそれは

前から知っている女のふりをして

近づいてくる、

横目で様子をうかがいながら。

なにか嫌なものを引き連れてそれは

予兆のように電話を鳴らす、

無意味な言葉を呪文のように散らしながら。

ざらついた砂のような悪意が、わたしの

からだに憑りついて離れない。

わたしは内部から辱めを受け

闇の中に切れ込んだ渇いた淵で

恥辱のうちに踏みしだかれる。

なお生きていることの苦痛を感じながら

死んだ方がましなのではないかと思うが

この苦痛と恥辱を人に知られたくないという

ただただ見栄のために

死ぬこともできないとわかっていて

宙ぶらりんの状態で長らえる。

「こんなことなら、いっそ

地獄に堕ちたほうがましだ」

踏みしだかれながら

わたしは叫ぶ。



その叫びは、

邪悪な哄笑にかき消された。

「おまえはいったいここを

どこだと思っていたのだ」

擦れる金属音のようなその声を

耳にしながら、

わたしは堕ちてゆく、堕ちてゆく、

堕ちてゆく、

そのとき

目の奥に見えるかすかな光に、正気づき

そのものの正体を名指す。

闇の支配者、闇の王……

おまえの名は、サタン

     *

勝った、わたしは

勝った。

闇の淵から、

夜の街が浮かび上がる

美しくもないネオンの輝きが

狂気じみてはいるが

それもまた人の営み。

わたしはふたたび歩き始める

人ごみに紛れながら。

新宿


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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: こんにちわ^^

> 穢れた人の世から抜け出そうと、懸命に何かを求めてそれを掴んだ途端、また性懲りも無く人の世に舞い戻って来る聖者の心境ですね^^
> 彼らは、なぜわざわざ人の世に戻って来たのかな?人々を救う為?いや、そんな綺麗事じゃ無いと思いますけどね…一度、ホンネを聞いてみたいです。

sado joさん、ご返信遅くなりました。

四旬節のころは、毎年深く地の底まで潜ってしまいます。もうすぐ復活祭です。わたしも徐々に復活しつつあります。春の生命の萌えいずるころ、私は生まれましたが、一度目はなんとか生まれることができましたが、それを繰り返すごとに、一度死ななければ生き続けることができなくなってきたように思えます。心ありつつ生きるのは、なかなかたいへんなことです。

こんにちわ^^

穢れた人の世から抜け出そうと、懸命に何かを求めてそれを掴んだ途端、また性懲りも無く人の世に舞い戻って来る聖者の心境ですね^^
彼らは、なぜわざわざ人の世に戻って来たのかな?人々を救う為?いや、そんな綺麗事じゃ無いと思いますけどね…一度、ホンネを聞いてみたいです。
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やっとみつけた本当のわたし。自分探しはもうおしまい。ずっとまえからここにいる。わたしの名はメランコリー。

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